同人誌の「魁」の例会を開催しています。毎月最終日曜日の午後3時から5時の間です。すでに4回開催しています。内容は、読書会と合評会です。読書会は、今迄に村上春樹「風の歌を聴け」、石原慎太郎「太陽の季節」、大江健三郎「飼育」、カミュ「ペスト」です。時間の関係で短編、文庫本に限定しています。合評会は皆の提出した原稿の感想を述べあっています。明日その5回目を開催します。場所は広島市中区堀川町の喫茶店「シャモニーモンブラン」です。6人位が出席します。興味のある方はどうぞ。
カテゴリー: 今時誰も観ない映画
父ありき
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小津安二郎の戦時中(1942年)の映画です。父の息子に対する愛情を描いた作品です。あの時代の雰囲気は実際には知りませんが、小説や映画を見る限り、すべて戦時色一色で殺伐たるものがあったと想像されます。しかし、この作品の繊細で清冽な画面は驚くほどです。感性を失うことなかった小津は素晴しい
中学教師の父は、箱根への修学旅行の引率で生徒の乗ったボートが転覆、死者を出してしまいます。その責任を取って中学を離職し信州へ帰ります。役場で働きながら息子を育てます。息子が中学、大学と進学するとその学費を稼ぐため東京へ出て工場で働きます。息子は大学を卒業すると、父と同じ教師になります。「教師を辞めたい」、とこぼす息子に「今の仕事を天職と思って全うするように」といさめます。やがて息子は婚約者をみつけます。これでやっと肩の荷が下りたと思った時、父は体調を崩し、緊急入院し、息を引き取ります。
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「残菊」
原作は林芙美子の短編です。
四人の芸者上がりの女(杉村春子、沢村貞子、細川ちか子(こうして並ぶと一番美しい)、望月優子)の日常を描いています。主人公は杉村春子で金貸をしています。色恋より金が第一の女です。元同僚にも貸して容赦なく取り立ててます。
細川ちか子の息子(小泉博)、望月優子の娘(有馬稲子、若い!!)はわが子の幸せを願う母の意向を無視して、意に染まぬ女、男と結ばれます。
杉村春子は昔燃えるような恋をした上原謙から一度会いたいと手紙が来ると、ワクワクして念入りな化粧をして男を待ちます。しかし、男の目的が金だと分かると、たちまち豹変して追い返してしまいます。この場面が一番凄い
新婚旅行に出る息子を見送った細川ちか子と望月優子は、思うようにならない子を嘆きながらも、それでも子供を育てた喜びに生きがいを覚える。
人生のどんずまりを生きる女達の生態を描いています。完成度は抜群です。杉村春子の早口とせかせか歩きがいつまでも頭にこびりついて離れない映画です。
「越境者」

ピエトロ・ジェルミ監督の初期の作品。演技陣には主役を除いて素人が起用されている。
シシリー島の鉱山が閉鎖され、ブローカーにそそのかされて、抗夫達がフランスへ越境していく物語である。途中、旅費を預かったブローカーに持ち逃げされ途方に暮れる。農園の収穫の人夫に雇われるが、それはスト破りのための雇用で、農民が騒ぎ出し一行は農園から放り出される。苦難に耐えかねて何人かは去っていき、会計係の老人が死んだりしたが、一行は吹雪の中を、やっと国境にたどり着く。フランスの国境警備兵は一行を尋問するが、彼らがシシリーからの避難民だと知ると咎めることなく去っていく。
各地の映画祭で多くの賞を獲得した。イタリアリアルズムの傑作。黒と白の画面、登場人物の沈黙の表情の多用、リーダーを演じるラフ・バローネの史劇にふさわしい立派な容貌とチラリと見えるローマの建物が印象的。わたし達の世代には、歌声喫茶などで歌われていた「大砲としゃれこうべ」の朗唱が懐かしい。
[人情紙風船]
「人情紙風船」昭和12年に公開された山中貞夫監督の作品です。この作品が封切られた当日に赤紙が届き、山中監督はそのまま中国に出征し、戦死しています。
この映画、観るのは2回目で、最初は余り印象に残っていません。おそらく舞台の長屋の描写が、あまりにも貧しかったのが原因でしょう。それにあまり聞いたことのない出演俳優の多くが前進座所属で、地味の上にも地味という印象を持ったせいもあるでしょう。
しかし、時を経て見直してみると、その日暮らしの長屋の住人の活力に共感するところがありました。それに対して同じ長屋に住む就活浪人の哀れさ。
ストーリーは二方向から進みます。同じ長屋に住む髪結いの新三と浪人の海野又十郎。質屋の白子屋(質屋が裕福なのは現在では考えられない)の娘を新三が誘拐し、それを行きがかり上又十郎がかくまう。長屋の大家(こちらも現在ではあまり裕福なイメージはない)の斡旋で、娘は無事に質屋の親元へ帰る。親からせしめた金で長屋の住人で宴会をする。この宴会の描写が面白い。又十郎も宴会に出るが、その後妻に責められ自殺してしまう。どうせ金は天下のまわりもの。新三も新三なら質屋も質屋、金に窮した貧乏人から巻き上げた金に過ぎない。ならどんちゃん騒いでぱっと使った方が勝ち。又十郎に比べ、長屋の住人の底抜けの活力。
