月別: 2020年6月

父ありき

 

 

        小津安二郎の戦時中(1942年)の映画です。父の息子に対する愛情を描いた作品です。あの時代の雰囲気は実際には知りませんが、小説や映画を見る限り、すべて戦時色一色で殺伐たるものがあったと想像されます。しかし、この作品の繊細で清冽な画面は驚くほどです。感性を失うことなかった小津は素晴しい

        中学教師の父は、箱根への修学旅行の引率で生徒の乗ったボートが転覆、死者を出してしまいます。その責任を取って中学を離職し信州へ帰ります。役場で働きながら息子を育てます。息子が中学、大学と進学するとその学費を稼ぐため東京へ出て工場で働きます。息子は大学を卒業すると、父と同じ教師になります。「教師を辞めたい」、とこぼす息子に「今の仕事を天職と思って全うするように」といさめます。やがて息子は婚約者をみつけます。これでやっと肩の荷が下りたと思った時、父は体調を崩し、緊急入院し、息を引き取ります。

 

比治山散策

 

 

比治山散策

まだコロナが収まらないので、我家近くの比治山公園を散策しました。山とは言いながら標高は低く、それこそ散策気分で歩けます。比治山は桜の花見等で何回も行った事があるのですが、改めて散策するのは初めてです。

入り口には真言宗の多聞院があります。このお寺は原爆投下後県庁だったお寺です。左に曲がると御便殿広場にはまんが図書館があります。元に戻り裏手を通ってしばらく歩くと旧陸軍墓地、かまぼこ型のABCCの建物があります。更に歩くと現代美術館があります。美術館の前はわが事務所が花見に行くムーア広場です。

写真は旧陸軍墓地にあるフランス人の墓碑です。ここらは広島の南の端、宇品港があります。ここからは多くの出征の兵士達が戦争へ旅立ちました。

元宇品散策

コロナ感染で、出かけることもままなりません。天気は良いので元宇品を散策しました。おそらくあまり人がいないだろうと思ったからです。しかし、案に相違して多くの人が散策していました。皆考えることは一緒だなと思いました。

この元宇品は江戸時代までは島でした。明治時代、広島県の県令千田貞暁宇品埋め立てにより陸続きになりました。

入り口は大きなマンションの裏側で分かりにくい。陽光きらめく下、穏やかな波の打ち寄せる海辺では、釣りをする人、子供を波打ち際で遊ばせる人、チェアを持ち出して日光浴をする人と海のオゾンを吸い込んでいます。

小Ⅰ時間ばかり、島をぐるりと歩くとプリンホテルが聳えるあたりが出口です。少し汗をかきました。気分転換にはちょうど手頃な散策コースです。

「或る小倉日記伝」

北九州市「森鴎外旧居」は小さな文学館!森鴎外の素顔に迫る

松本清張の芥川受賞作である。森鴎外が小倉で過ごした三年間の日記である『小倉日記伝』(完全な形では残っていなかった)を、障害者(神経性の障害で片足が麻痺しており、しかも言葉をうまく喋れない)である田上幸作が補完作業をする姿が書いてある。時代は戦時下、母の裁縫と家賃収入で細々と暮らし、しかも障害を抱えた身での生活は苦しかった。しかし、何度も挫折感を味わいながら、風呂敷一杯の資料を集めた。戦後、食糧難と麻痺症状の進行でなかで甲作は息を引き取る。その翌年、鴎外の一族によって『小倉日記伝』の原本が発見される。つまり甲作の努力は水泡と化したのである。何とも救いのない作品だが、甲作の結果的には埋もれてしまったがひたむきな生き方が胸を打つ。松本清張の文体は乾いて切れが良くスピード感があるが、この作品は少しウェットで、少しスピードが落としてある。