船には千人近い移民が乗っている。作者は実際に移民船に乗ってブラジルに渡航した体験をしている。作者は移民するような貧しい家庭に育ったわけでもないのに、どういう経緯でそういう体験をしたのか分からない。しかし、その体験が無ければこのリアル感は出せなかったに違いない。
群集小説である。皆、日本の貧しさから逃れるために移住しようとしている。社会性を持った作品であるのに、作者は社会主義には興味を持っていない。骨太で突き放したような文体である。皆、よく酒を飲むし、歌を歌うし、踊る。移民たちは貧しいけれども絶望はしていない。人間万歳程では無いにしても、人間で満更捨てたものではないなと感じさせる。
