日: 2019年9月18日

[人情紙風船]

「人情紙風船」昭和12年に公開された山中貞夫監督の作品です。この作品が封切られた当日に赤紙が届き、山中監督はそのまま中国に出征し、戦死しています。

この映画、観るのは2回目で、最初は余り印象に残っていません。おそらく舞台の長屋の描写が、あまりにも貧しかったのが原因でしょう。それにあまり聞いたことのない出演俳優の多くが前進座所属で、地味の上にも地味という印象を持ったせいもあるでしょう。

しかし、時を経て見直してみると、その日暮らしの長屋の住人の活力に共感するところがありました。それに対して同じ長屋に住む就活浪人の哀れさ。

ストーリーは二方向から進みます。同じ長屋に住む髪結いの新三と浪人の海野又十郎。質屋の白子屋(質屋が裕福なのは現在では考えられない)の娘を新三が誘拐し、それを行きがかり上又十郎がかくまう。長屋の大家(こちらも現在ではあまり裕福なイメージはない)の斡旋で、娘は無事に質屋の親元へ帰る。親からせしめた金で長屋の住人で宴会をする。この宴会の描写が面白い。又十郎も宴会に出るが、その後妻に責められ自殺してしまう。どうせ金は天下のまわりもの。新三も新三なら質屋も質屋、金に窮した貧乏人から巻き上げた金に過ぎない。ならどんちゃん騒いでぱっと使った方が勝ち。又十郎に比べ、長屋の住人の底抜けの活力。